空間構成を見ることの面白さ

空間構成〜空間の構成〜とはどういうことでしょうか。

たとえば、

2DK、3LDK, 4DK......という記述

D=食堂(dining room)、K=台所(kitchen)、L=居間(living room)、(もしくはLD=居間兼用食堂)、2,3,4の数字は部屋数を示しています。3LDKは、居間、食堂、台所の他に3室(通常個室に用いられることが多い)がある住宅であるという意味です(トイレやバスは、3LDKというような呼び方からは、当然あるべきものとして省略されているのでしょう。単身者のアパートではUB=ユニットバスなどという表現がなされている場合もありますね)。

これは、空間を<用途>によって記述する方法のひとつと言えます。

一般には<用途>と<機能>が混同されて話されたり記されたりしている場合が多々あります。たしかに<用途>と<機能>は似ているのですが、全く異なるものごとの捉え方ですので注意しましょう。この点については授業の中で少し詳しく説明する予定です。

6畳一間、8畳と6畳二間と4畳半、百畳敷き......という記述

日本では古くから畳が使われていて、畳の枚数によって部屋を呼ぶ呼び方があります。上の例は読んで字のごとく、六畳の部屋がひとつだけとか、八畳の部屋がひとつと六畳の部屋がふたつと四畳半がひとつとか、百畳の広さがあるという意味ですね。そして、日本の住宅では、ふすまや障子といった可動間仕切りを使って必要に応じてひとつながりの空間の広さを変えたり、あるいは座卓を出したりしまったり、布団を敷いたりあげたりするなどして、部屋の用途を固定せずに用いていました。そんなところから、部屋を用途によって呼び分けるのではなく、広さによって呼び分ける方法が使われたのでしょう。

これは、空間を、<規模>によって記述する方法のひとつと言えます。
ギリシア十字型、ラテン十字型.....キリスト教教会の平面形態の記述

キリスト教教会の平面形は、おおざっぱに分けると、ギリシア十字型のものとラテン十字型のものがあります(ギリシア十字とは腕の長さが等しい十字、ラテン十字とは一方の腕が長い十字です)。それぞれの平面の上に、どのような空間をつくればよいでしょうか。同じようなものができあがるでしょうか。歴史的には、ギリシア十字を持つものは東ヨーロッパでドームの架かる建築として発展し、ラテン十字をもつものは西ヨーロッパでヴォールトの架かる建築と、それぞれ全く異なる空間が達成されていきました。また、ラテン十字型の教会を見ると、ロマネスク様式〜ゴシック様式〜、と変化していきました。ここで重要なのは、ロマネスク様式とかゴシック様式というのは、空間構成の相違を示すものではないことです。ラテン十字型という点で、空間構成は同じなのです。

さらにこれらを一括すれば、十字型はキリスト教の一般的教会の平面構成である、というように説明できます。

これは、<平面形態の抽象化>によって記述する方法のひとつです。

 

さて、上に3つの例をあげましたが、空間構成を記述しているのはどれでしょうか?

まず、3LDKなど。これはある住空間にどのような用途の空間が用意されているかを示していますね。だから空間構成を記述しています。

次に、六畳一間など。これはある建築全体がもつ複数の部分空間の規模を示していますが、それによって部分同士のつながりは分かりません。つまり、これは空間の量を示してはいますが、空間構成を示す記述とは言えません。(日本の伝統的な住まい方は、空間単位としての部屋に定まった用途を固定するものではありませんでした。ある時は座卓を置いて食堂に、あるときは布団を敷いて寝室に、などと、同じ部屋でも道具立てによって、用途を変化させるものでした。だから用途で室名を示す方法が取られなかったのは当然といえます。)

最後のキリスト教教会の例。上の説明の中に答えを書いてあります。もちろん空間構成の記述です。

 

このように<空間構成>と一口に言っても、観察のしかた(切り口)によって、いろいろな空間構成の捉え方が可能です。これが空間構成を見ることの面白さといえるでしょう。

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