認知地図(頭の中の地図)の構成

認知地図とは、人それぞれが自分の頭の中につくりあげている地図です。

まちを歩くとき、都市を移動するとき、人は自分の認知地図に基づいて行動しています。例えば都市をデザインするときには、認知地図をつくりやすい構成に仕立てることも重要でしょう。

都市工学者ケビン・リンチは、著書『都市のイメージ』(1960)の中で、都市の構成要素として次の5つをあげました。下表は箱田裕司編、『認知科学のフロンティアI』、1991、サイエンス社、に基づいて構成しました。

パス(path)

パスとは、人間が通ることのできる道筋をいう。例えば通常,道路、鉄道、航路、航空路、橋、廊下などがそれである、人々は、このパスに沿って移動し、種々の対象物や個別場所をそこに位置づける。個別場所が先に存在し、それらを結ぶのがパスなのか。パスが先に存在し、そこに個別場所が配置されるのか。それらは同時にできあがるのか。種々の場合が考えられるが、実際に何が生じているかは、完全には解明されていない。

ノード(node)

ノードとは、人間が入り込むことのできるパスにつながっている空間の主要な場所をいう。たとえば、交差点、駅、空港、広場などがそれである。

ランドマーク(landmark)

ランドマークとは、考察中の認知地図において、そこに入らない対象物あるいは場所で、移動の目印になるようなものをいう。たとえば、看板、建物、公園、駅などがそれにあたる。ランドマークは、山や塔のように必ずしも「パス」に接している必要はない。

エッジ(edge)

エッジとは、考察中の認知地図において、人がその線を越えて移動しないものをいう。たとえば、海岸線、崖、壁、川岸、湖岸などがそれに当たる。崖からハンググラダーで飛ぶ人の認知地図では、「崖」はノードとなる。

ディストリクト(district)

ディストリクトとは、何か独特の特徴がその中に共通してみられる比較的大きな領域をいう。たとえば、市の中心部(外国で、通常「シティー」と呼ばれている領域)、中華街、瀬戸内海、紀伊半島などがそれである。

箱田裕司編、『認知科学のフロンティアI』、1991、サイエンス社、より

 

→リンチによるボストンの分析 GIFアニメーション (Heavy!!)