物理的な空間

数学はもともと実用的なことが起源にあります。物理はその延長にあると考えていいでしょう。学問は発展していくと同時に細分化し、根っこが同じでもやがて違うジャンルとして捉えられようになることはしばしばあります。数学で習った微積分も、もともとはニュートンやライプニッツが物理現象を解くためにつくった数学です。

さて、建築の視点から物理的な空間を見ればとうなるでしょうか。

ここでは私たちが住んでいる3次元空間を考えてみましょう。

数学の世界では、3次元空間は一般的に、x,y,zの3本の軸からなる座標空間を設定すれば、あらゆる点を記述できます。点が記述できれば線も面も立体も記述できます。私たちの身の回りも、どこかに原点を設定してやれば、すべてを座標で記せます。ところが、問題があります。数学の世界では、空中にふわふわ浮いていた立体が、物理の世界になったとたんに下に落ちてしまうではありませんか。数学ではプラスの値やマイナスの値がありました。下に落ちるというのは、座標のzの値が小さくなるということ。数学では、プラスやマイナスと行っても、それは上下を示すものではありません。位置の違いを、まるで絶対的であるかのような見せかけで相対的に示しているだけです。物理の世界では、下に落ちるということは、引力(重力)が働いているということ。そう、z軸に方向性があるのです。

これが、私たちが関わる物理的な3次元空間で大切なことのひとつでしょう。

数学では、点というと「位置があって大きさがなく」、線というと「長さがあって太さがなく」、面というと「広さがあって厚さがない」と教えられた記憶があるでしょう。そんなことありっこない、と思ったとしたら、それは物理の世界でものを考えているからです(素粒子の世界では違うのですが、ここでは私たちの目に見えない世界のことはとりあえず考えないことにします)。物理の世界では、何か存在すれば、必ず、重さと大きさがあります。重さがあるモノが二つあれば、なぜだかそれぞれが引き合います。これがニュートンが発見した万有引力です。

引力があるから、梁を柱の上に乗せなければなりません。建物はいろいろな部材で構成されています。それぞれの位置関係だけは数学的に記述できるけれど、部材のサイズや重さは、数学の世界では記述できないのです(もちろん大きさや重さを求めるために数学を使いはするけれど)。

でも、これでちょっと私たちが生きている空間に近づいてきました。

そういえば、物理の空間では空間が歪んでいたりするらしいです。光はかならずまっすぐ飛ぶから、光が曲がって飛んだように見えたら、それは曲がって飛んだのではなく、空間が歪んでいて、光は歪んだ空間に沿ってまっすぐ飛んだということになるそうです。興味深い話だけれど、とりあえず、建築をつくる上ではあまり関係のないことですね(日常生活では平らに見えている地面だって、地球という球面の一部だから、ほんとうは平らではないし)。

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