新しい建築の5つの点:Cinq points

5つの点
ル・コルビュジエが提唱した新しい建築の留意点で、図の左半分に示されています。ここでいう新しい建築とは、近代において人間が手中にした新しい技術を用いながら、それ以前の様式などから発想されたものから解き放とうとするものです。

さて、その5つの点とは;

  1. ピロティ
  2. 屋上庭園
  3. 自由な平面
  4. 水平連続窓
  5. 自由なファサード

であり、サヴォワ邸に顕著に現れています。

図の右半分と左半分を比較すれば分かるように、新しい建築は各建築要素の機能を十分に分節させることによって生まれます。ル・コルビュジエは、構造を受け持つ部分と受け持たなくてもよい部分を分節させたようです。以前は、柱は壁と一体化していて荷重伝達にも一役買っていたから、窓は縦長にしか開けられないし、壁は柱間を埋めるようにしか配置できませんでした。しかし、柱梁が荷重を十分に伝達できるものならば、壁は、構造上あってもなくてもよく、純粋に空間構成要素として扱えます。こうして壁は構造の呪縛から解き放たれ、自由になったのです。

このようにして生まれるのが、ピロティであり、自由な平面であり、水平連続窓であり、自由なファサードです。その意味では、ピロティ、自由な平面、水平連続窓、自由なファサードは、建築要素の機能的分節の帰結として得られます。また、ピロティと屋上庭園は環境への適合を目指したものと見ればいいでしょう。したがって、5つの点は、<機能的分節>と<環境への適合>に対する十分な考慮という2点に集約されます。

これらの理念をル・コルビュジエ自身のデザイン・ボキャブラリとして示したものが、この5つの点なのです。

日本では、<(近代建築の)5つの要点>という訳語が適用されている場合もあるが、原語ではあくまでも"cinq points"、つまり「5つの点」に過ぎず、<要(点)>というニュアンスは強くありません。われわれが留意すべきなのは、ル・コルビュジエのデザイン・ボキャブラリではなく、その理念なのです。

 

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