建築を学んでいると当たり前のように建築空間とか空間デザインとかいう言葉が飛び交いますが、いったい<空間>とは何ですかと問われると、答えに詰まってしまうのではありませんか。このような時は、とりあえず辞書をひもとくのがいちばんです。そこで、広辞苑をひもときました。
くう‐かん【空間】
- 物体が存在しない、相当に広がりのある部分。あいている所。「ビル街の―」
- (space)
- 〔哲〕時間と共に物質界を成立させる基礎形式。アリストテレスなどの古代的概念としては、個々の物が占有する場所(トポス)。ニュートン以後の近代では、すべての方向に無限に拡がる果てしのない均質な絶対空間として見られるようになる。カントはこのような空間を時間とともに人間精神の直観形式とする観念論の立場を呈示した。→時間。
- 〔数〕一つの定まった集合について、それを構成する要素や部分集合などを考察する場合に、はじめの集合を空間という。n 次元空間・リーマン空間・線形空間・関数空間などの類。
- 〔理〕自然現象の生起する場所。古典力学では、空間を物質の存在から独立した空虚な容器すなわち三次元ユークリッド空間と考えたが、相対性理論では、空間は時間と不可分であり、物質の存在の仕方により変化するものであることが示され、四次元リーマン空間が導入された。→時空世界
広辞苑第4版、岩波書店より
「空間」=「空」+「間」ですから、1番目の説明は当たり前のことです(ここで「空」とは何か、「間」とは何か、という議論にもちこむと話がややこしくなるのでやめておきましょうね)。
2番目の説明は、英語の"space"の訳語としての「空間」に関する説明として記されています。英語のspaceには、宇宙というような意味もありますが、もともとどのような意味だったのでしょうか。美術史家オナイアンズの説明を見てください。
この説明から、"space"は、古代ギリシア世界、古代ローマ世界をひきずっている言葉だということが分かりました。そして、1次元から3次元へと拡張されてきたことも分かりました。3次元であるところが、建築空間にとって大切なことです。なぜなら、私たちの日常に存在する事物はすべて3次元のオブジェクトだからです。
さて、東洋においてはどうだったのでしょうか。老子によるとてもわかりやすい説明を見てください。
老子は文字通り「何もないところ」として空間を捉えていて、「有るもの-形有るもの-」が役に立つためには「何もない」部分が必要だということですが、「何もない」部分に気づくためには「有るもの-形有るもの-」が必要であると考えれば、まさに、デザインする立場からみた場合の建物と空間の関係になります。つまり、建築をデザインすることとは、空間をつくる=何もない部分をつくることですから、形有るものをつくることによって何もない部分=空間を生みだす行為に他なりません。
※このページでは「空間をつくる←形有るものをつくる」という関係を前提として話を進めていきます。